
2026年06月09日に、音楽配信代行サービス(ディストリビューター)の narasuから利用規約と個人情報保護方針の改定についてのお知らせメールが届きました。
「本人確認書類」という文言が追加されていたため、不安に感じた方もいるかもしれません。
しかし、内容を確認すると、今回の改定は主に新規登録ユーザー向けの本人確認手続きに関するもので、既存ユーザーに直ちに影響するものではなさそうです。
この記事では、メールの内容を整理しながら、今回の改定で何が変わるのかを見ていきます。
narasuの利用規約・個人情報保護方針が改定へ
本人確認書類の提出に関するルール

今回の改定は2026年6月9日から適用されるもので、主な変更点として、本人確認(KYC)に関する規定が新たに追加されています。
利用規約では、本人確認書類の提出に関するルールや手続き、利用条件が明確化され、個人情報保護方針では、本人確認書類の取得・管理方法や利用目的についての説明が追加されました。
既存ユーザーへの影響は限定的
メールによると、今回の変更は主に今後新規登録するユーザーを対象としたもので、既存ユーザーに対して直ちに本人確認書類の提出を求める予定はないとのことです。
ただし、不正利用や不正な再生行為が疑われる場合、権利侵害に関する調査が必要になった場合、なりすましや虚偽登録が疑われる場合、配信ストアから確認要請があった場合などには、既存ユーザーであっても本人確認書類の提出を求められる可能性があると案内されています。
つまり、現時点で既存ユーザーが何か手続きを行う必要はありませんが、サービスの健全な運営や不正利用防止のために、本人確認に関する規定が整備されたという内容のメールでした。
なぜ本人確認が必要になってきているのか?
本人確認の厳格化の明確な理由
音楽配信代行サービス(ディストリビューター)で本人確認書類(身分証明書)の提出が求められるようになると、「そこまで必要なのか」と驚く人も少なくないでしょう。
しかし、近年の音楽業界を取り巻く状況を見てみると、このような本人確認の厳格化には明確な理由があります。
配信サービスの普及によって誰でも手軽に楽曲をリリースできるようになった一方で、不正行為や生成AIによる権利侵害などの問題も増加しています。
そのため、各ディストリビューターはアーティストや権利者を適切に管理し、安全な配信環境を維持する必要に迫られています。
こうした背景から、本人確認書類の提出を求める動きが広がっていると思われます。
悪質な不正ユーザーの増加と配信ストアからの圧力
なぜ今、音楽配信プラットフォームで、このような対応が進められているのか、その理由を順を追って見ていきましょう。
人工再生(ストリーミング詐欺)の横行
ボット(自動化プログラム)を利用して特定の楽曲を24時間体制で繰り返し再生し、本来のリスナーによる正当な再生回数ではなく、人工的に再生数を水増しすることで著作権印税(ロイヤリティ)を不正に獲得しようとする悪質なユーザーが、近年世界各国で増加しています。
このような不正行為は、音楽配信サービスの収益分配の公平性を損なうだけでなく、正当に活動しているアーティストや権利者にも悪影響を及ぼす深刻な問題として認識されています。
こうした状況を受け、各音楽配信プラットフォームでは不正再生の監視体制を強化し、不自然な再生パターンや不正アクセスの検出に積極的に取り組んでいます。
また、不正行為に関与している可能性のあるアカウントを迅速かつ正確に特定するため、配信を取り扱うディストリビューターに対しても、配信者の身元や権利関係をこれまで以上に明確化することが求められています。
その背景には、「誰がどの楽曲を配信しているのか」を透明化し、不正行為の抑止と責任の所在の明確化を図りたいというプラットフォーム側の意図があります。
著作権侵害(無断アップロード)の防止
他人が制作した楽曲や、AI技術を利用して無断で生成した第三者の声を用いた楽曲を、あたかも自分自身のオリジナル作品であるかのように配信してしまうケースが後を絶ちません。
こうした行為は著作権や肖像権、パブリシティ権などの権利侵害につながる可能性があり、配信プラットフォームや権利者との間で深刻なトラブルへ発展することもあります。
そのため、多くの配信サービスでは不正利用や権利侵害を未然に防ぐ目的で、アーティストや配信者に対する本人確認の重要性が高まっています。
万が一問題が発生した場合でも、責任の所在を明確にし、権利侵害を行った当事者を特定できるようにするためです。
こうした背景から、近年では楽曲配信時の身元確認が事実上の必須要件となりつつあり、業界全体でより厳格な運用が進められています。
配信ストア(SpotifyやApple等)からの圧力
メールの項目にも「配信ストア等から確認要請を受けた場合」と記載されているように、近年では配信ストア側による本人確認の厳格化が進んでいます。
そのため、ストア側がディストリビューター(narasu など)に対し、「本人確認が完了していないアーティストやユーザーの楽曲については配信を停止する」「ロイヤリティの支払いを保留または差し止める」といった強い対応を求めるケースが増えています。
こうした措置は、不正利用や権利侵害、なりすましによる配信を防止することを目的としており、ディストリビューター側もストアの要請に従って本人確認の実施を強化せざるを得ない状況となっています。
narasu既存ユーザーへの影響は?
現時点では主に新規ユーザーを対象

メールに記載されているとおり、今回の本人確認強化の取り組みは、現時点では主に新規ユーザーを対象として実施されているとみられています。
そのため、すでにアカウントを保有している既存ユーザーについては、特別な手続きや設定変更を行う必要はなく、これまでどおりサービスを利用して問題ない状況です。
既存ユーザーも確認対象となる可能性はある
ただし、既存ユーザーだからといって、今後も必ず本人確認の対象外となるわけではありません。アカウントの利用状況や運営側の判断によっては、追加の確認を求められる可能性があります。
例えば、楽曲の再生数が短期間で不自然に増加した場合、システムがBotなどによる人工的な再生と誤認し、不正利用の有無を確認するために本人確認を求めるケースも考えられます。
また、第三者から「自分の楽曲と酷似している」といった著作権侵害の疑いで通報を受けた場合にも、事実確認の一環としてアカウント情報の確認が行われる可能性があります。
現時点では過度に心配する必要はない
もっとも、オリジナル楽曲を継続的に配信し、規約に沿った通常の活動を行っている限り、過度に不安を感じる必要はないでしょう。
今回の対応は健全なプラットフォーム運営を目的としたものであり、一般的な利用者に大きな影響が及ぶ可能性は現時点では高くないと考えられます。
実際に私は2025年6月からnarasuを利用しています。以下のサイトで「音楽配信代行サービス narasuの特徴と魅力」では、narasuについて詳しく紹介してくれていますが、私自身も非常に優良なディストリビューターだと感じています。
利用料金が比較的低価格に設定されているにもかかわらず、楽曲審査のレスポンスが早く、配信までの流れもスムーズです。
そのため、コストを抑えながら音楽配信を行いたいアーティストやクリエイターにとって、利用しやすいサービスだと思います。
これまで利用してきた中でも対応面に不満を感じることは少なく、総合的に見て信頼できる優良なディストリビューターの一つだと考えています。

AI生成楽曲や不正再生の問題があまりにも大規模化したことで、ソニーやユニバーサルといった大手レコード会社、さらにはSpotifyなどのストリーミングサービス側も強い危機感を抱くようになったのでしょう。
身分証の提出が必要になることには驚かされますし、多少の戸惑いを感じる部分もあります。しかし、生成AIや不正行為によって汚染された音楽プラットフォームの健全性を取り戻すためには、こうした対策も必要なのかもしれません。
今回の動きは、音楽配信の世界が、かつてのように誰でも気軽に活動できる環境から、運営側による本人確認や権利確認をより重視する時代へと移行しつつあることを示しているように思えます。
記事公開日:2026年06月10日 by KSTY

