2024年09月21日にテレビ朝日開局65周年記念として放送された山田太一さん原作のドラマ「終りに見た街」の2024年版をTVerで視聴しました。
映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」の視聴メモでも触れた作品で、2024年版も必ず視聴しようと思っていましたが、録画をするのを忘れてしまったので、放送翌日の09月22日にTVerで視聴しました。
中井貴一さんが主演した2005年版を視聴していますので、見終わった後にすっきり感がなくモヤモヤするのは予想していましたが、宮藤官九郎さん脚本、大泉洋さん主演の2024年版「終りに見た街」も予想した通りでした。
終りに見た街 2024年版のストーリー&主要キャスト
終りに見た街 2024年版のストーリー
<ドラマのキャッチコピー>
今朝目覚めたら、
昭和19年だった。
テレビ脚本家の田宮太一(大泉洋)は、代表作やヒット作こそないものの、20年間地道に仕事を続けてきた。
家庭では妻・ひかり(吉田羊)、娘・信子(當真あみ)、息子・稔(今泉雄土哉)、認知症が進行し始めた母・清子(三田佳子)と、平凡ながらも穏やかな日常を送っていた。
そんなある日、プロデューサーの寺本真臣(勝地涼)から「終戦80周年記念スペシャルドラマ」の脚本執筆を急に依頼され、太一は断り切れずに引き受けてしまう。
戦争を経験していない太一は、寺本から渡された大量の資料を読み込み始めるが、次第に疲れ果て、気づけば眠りに落ちてしまう。
夜明け、突然の衝撃音で目を覚ました太一が外を見ると、見慣れた景色が広がるはずの自宅周辺には、一面の森が広がっていた。
混乱しながらも外に出て状況を確認した太一は、そこが太平洋戦争中の昭和19年06月であることを知る。
この異常事態に家族全員が騒然とするなか、同様に息子と昭和19年にタイムスリップしてしまった太一の亡き父の戦友の甥・小島敏夫(堤真一)から電話がかかる。
敏夫父子と合流した太一はひと安心するが、すぐに戦時中の厳しい現実と向き合うことを余儀なくされる。
終りに見た街 2024年版の主要キャスト
画像出典:「テレビ朝日 公式サイト」
テレビ朝日初主演の大泉洋さんと人気脚本家の宮藤官九郎さんの初タッグで山田太一さん原作の「終りに見た街」を令和版にリブート。
家ごとタイムスリップする田宮家の太一役は大泉洋さん、妻・ひかり役は吉田羊さん、娘・信子役は當真あみ さん、息子・稔役は今泉雄土哉 さん、母・清子役は三田佳子さん。
他、主要キャストは小島敏夫役の堤真一さん、小島新也役の奥智哉さん、キーパソンである寺本真臣役の勝地涼さん。特別出演は神木隆之介さん、田辺誠一さん、塚本高史さん、西田敏行さん、橋爪功さんなどの豪華キャストです。
タイトル:終りに見た街
放送:2024年
時間:90分
原作:山田太一
脚本:宮藤官九郎
出演:大泉洋, 吉田羊, 奥智哉, 當真あみ, 今泉雄土哉, 三田佳子, 堤真一, 勝地涼
視聴日:2024年09月22日
作品評価:A
終りに見た街の感想 – 作品評価 A
7割~8割くらいは製作側の思惑通り
画像出典:「テレビ朝日 公式サイト」
多くのX(旧Twitter)でのポストを見ると、何の情報もなくドラマを視聴した人はやはり衝撃のラストに混乱した人が多いという印象です。
序盤は宮藤官九郎さん脚本の意識低い系タイムスリップコメディードラマ「不適切にもほどがある!」(2024年)みたいなゆる~い感じのクドカンさんらしい笑えるシーンもありましたが、最後まで視聴した後は・・・だと思います。
なかにはトラウマレベルで引きずりそうな人もいそうな感じなポストもXでは見受けられました。
そんな中でもSNSを活用した話題性作りや、作品放送後の考察の多さをという点ではクドカンさんをはじめ製作側(テレ朝)の思惑通りだったのではないかと感じています。
ドラマの中でも「戦争物は視聴率が取れない」と、今作のキーパーソンのTVプロデューサーの寺本が言っていますが、令和版「終りに見た街」の視聴率は世帯8.1%(個人4.8%)で、けして高い数字ではありませんでした。
しかし、テレビ離れの進んでいるなかで、もちろん視聴率も重視されますが、TVerの再生回数も同等にかなり重要です。
「終りに見た街の X公式アカウント」では以下のポストもありましたし、深く理解しようとする人は何度か観ると思いますので、製作側としては7割~8割くらいは上手く行ったのではないでしょうか?
<終りに見た街 X公式アカウントより>
只今見逃し配信1位!!
是非連休最終日にご覧下さい
<終りに見た街 X公式アカウントより>
皆さまご視聴ありがとうございました!
「終りに見た街」
まだまだ配信でご覧頂けます!
ただいま3位!
ラストはやはりモヤモヤが残る
1982年と2005年にドラマ化されている「終りに見た街」ですが、2005年版を視聴したときにはモヤモヤ感が残りました。
今回はクドカンさん脚本でリメイク作品ではなくリブート作品であることが強調されていたので、そのモヤモヤが少しでも解消されるのではないかと思っていました。
しかし、2024年版で新たに登場したキーパソンである寺本や、母・清子の幼少期がラストで登場したりで、2005年版よりもモヤモヤしました。
それでも「それぞれの捉え方で考えてくれ」的なラストではありましたが、ラストシーンでの視聴者へのメッセージ性という点では、しっかりと分析すると2005年版よりもわかりやすかったです。
山田太一が終りに見た街で伝えようとしたこと
画像出典:「テレビ朝日 公式サイト」
何年か前に2005年版「終りに見た街」を視聴した後に「現代人が昭和19年に行くという設定以外には今の人に戦争体験を伝えることは難しい」という山田太一さんのコメントを何かで読んだ記憶があります。
また、衝撃的ラストばかりに目が行きがちですが「変わり方がとても激しく夢中になってしまう日本人の気質への大きな不安感や恐怖感」を作品のなかで、山田太一さんが伝えようとしたという本人のコメントも記憶に残っています。
もし日本が戦争をやったら、夢中になってしまう日本人の気質が爆発するという不安感や恐怖感を2005年版もそうでしたが、2024年クドカン版「終りに見た街」でも、充分すぎるくらいに、しっかりと作品のなかでは伝えていました。
一緒にタイムスリップして来た太一の娘・信子、息子・稔、敏夫の息子・新也は、次第に戦争を受け入れます。
そして恐ろしいまでに感化され戦争時代にのめり込み、完全に軍国主義に染まってゆきます。
負けることがわかっている戦争であるはずにも関わらず「誰一人日本が負けると思っていない」と、戦争の結果を知る人間からすれば「正気を失っている」と思える状態になり、日本の勝利を信じるようになります。
終盤に同じく戦争時代にタイムスリップしたミリタリー系 YouTuber の瀬尾が登場しますが「日本が勝てばよいんです。勝ったほうが正義。タイムスリップしたのは歴史を変えるためだ。」などの彼の発言にはゾッとしました。
2024年クドカン版オリジナルのミリタリー系 YouTuber ですが、戦時にのめり込み、完全に染まりきったセリフはゾッと感が増しました。
終りに見た街の考察1
タイムスリップは夢だったのか?現実だったのか?
やはり混乱した人が多くいた「タイムスリップは夢だったのか?現実だったのか?」ですが、以下の物語終盤での太一のセリフがヒントとなります。
<太一のセリフ>
ずっと考えてたんですよ。この逆行~
これが夢だったり、錯覚だったり、ドッキリだったらいいなって。~でも残酷なまでに現実。
どうにもこうにも昭和20年。
でもあの警防団の男、将校、兵士、全部同じ顔なんですよ。全部同じ奴がやっている。
そんなのありえないでしょう。
芝居じゃないんだから。
でも同じ、全部同じ奴ですよだから、これやっぱり現実じゃないかもしれません。
太一のセリフから推測すると2024年版「終りに見た街」は「残酷なまでに現実」と「これやっぱり現実じゃないかもしれません」の入り混じった世界です。
この台詞があることにより、ラストの少女時代の太一の母親が初恋の人に背負われる現実ではないシーンなどへの視聴者からの批判意見をかわすことができます。
現実だったと言える世界
勝地涼さん演じる寺本のSNSへの投稿と、現代へ戻ってきたときの服装やメンコからタイムスリップは夢ではなく現実だったと言えるのではないでしょうか。
寺本のSNSへの投稿を整理するとタイムスリップ直前の2024年06月25日 5時44分に「#こんな時代だから」「#早朝サウナ」「#世界平和うぇい」の通知がスマフォに来ていて、そのあとに通信が途切れ、昭和19年にタイムスリップします。
そしてラストの爆風で吹き飛ばされ現代社会に戻ってきたときに、まず画面に映されたのは日付はわかりませんでしたが6時14分で、途絶えていたスマフォの通信が繋がります。
その後に寺本の「#こんな時だから」、次いで「#ビンテージワイン、空けちゃううぇい」の投稿が表示されます。
戻った世界は202X年となっていて、初めは過去にタイムスリップした時間の30分後の世界に戻ってきたと推測していましたが、寺本の発言と壊滅はしていても炎が上がっていない街の姿から、戻ってきた世界はもう少し日にちが経っている気もします。
まず、寺本のワインセラー最後のビンテージワインの発言は、少し考えすぎかもしれませんが、地下シェルターでの生活が長くなっていることを示唆しています。
次にタイムスリップした時間の30分後の世界ならミサイルや爆弾の炎が上がっていてもおかしくはないですので、タイムスリップした時間の30分後ではなさそうです。
太一が現代へ戻ってきて判明したのが、現在が202X年という事実ですが、2024年と視聴者に日付を特定させてしまうと、山田太一さんの作品の考えと異なってしまいます。
そうなるとリブート作品ではなくリメイク作品になってしまうので、あえてクドカンさんは日付を見せなかったはずです。
タイムスリップ直前に東京は奇襲攻撃されていた
タイムスリップ直前の2024年06月25日の5時44分にスマフォ画面が消え通信が途切れたことがわかりますが、その直後に雷のような衝撃音とともに部屋の外が光ります。
これは昭和19年へのタイムスリップのキッカケでありますが、おそらく、この時点で太一たちが生きている現代の東京が奇襲攻撃を受けたのだと思います。
寺本のSNSへの投稿の「#こんな時代だから」「#早朝サウナ」「#世界平和うぇい」から推測すると、「#こんな時代だから」は「攻撃されるのはわかってたよ、しっかりと戦争が始まったときの準備をしていたよ」という感じのことがわかります。
そして「#早朝サウナ」は地下シェルターを意味していて、逃げ込んだ地下シェルターという安全地帯から攻撃される前に「#世界平和うぇい」を発信しています。
核爆弾なのかミサイルなのかはわかりませんが、寺本の発信から判断すると宣戦布告なしに奇襲攻撃を受けています。
今の日本は戦後ですか?それとも戦前ですか?スマフォ越しの安全地帯からの #世界平和うぇい 的な人たちに教えてほしいです。
この記事を書いている時点では2024年版の「終りに見た街」はTVerで無料視聴することができています。
尚、冒頭で書いているようにこの「終りに見た街」の記事は個人的見解や考察で、誰かと作品に対する意見をやり取りすることは目的としていません。
あくまでもひとつの見解として「終りに見た街 2024年版」の視聴前や視聴後の参考にしてもらえたらと思います。
記事公開日:2024年09月26日 by KSTY
ラストが衝撃的なので様々な意見のある「終りに見た街」だけど、山田太一が伝えようとしていた「変わり方が激しく夢中になってしまう日本人の気質への不安や恐怖」を2024年クドカン版でも明確に伝えていた
今日本は戦後?それとも戦前?#大泉洋 #終りに見た街 #フォロバ100https://t.co/tr8stX557A— FINE WINGS – 音楽配信 & 映画 (@fine_wings) 2024年9月26日