
第5期として2019年11月より活動を展開してきたWANDSが、2027年3月のラストライブツアーをもって活動に一区切りをつけることが発表されました。
活動終了の理由は、ボーカル・上原大史さんが「自身の新たな表現へ進んでいきたい」と強く希望したことを受け、メンバーや関係者との慎重な協議の末に決定されたものです。
本記事では、上原大史さん、柴崎浩さん、木村真也さんそれぞれのコメントをわかりやすくまとめるとともに、第5期WANDSが約7年間で残した実績や評価についても詳しく解説します。
また「WANDS第5期は売れていない」と言われる理由を、1990年代の黄金期との比較や現在の音楽市場の変化という視点から客観的に考察し、第5期が果たした役割を振り返ります。
WANDS第5期メンバーのコメント
2027年3月をもって第5期WANDSとしての活動終了の発表にあわせて、上原大史(Vo)、柴崎浩(G)、木村真也(Key)のメンバー3人はコメントを公開しています。
上原大史(Vo)のコメント

上原大史さんは、約7年間務めたWANDSのボーカルとしての活動を終了し、今後はソロアーティストとして新たな道を歩むことを発表しました。
これまで支えてくれたファンや関係者への深い感謝を伝えるとともに、WANDSで過ごした時間はかけがえのない宝物であり、「やってよかった」「出会えてよかった」と心から感じていると振り返っています。
一方で、歴史あるWANDSのボーカルを担い続けることへの重圧や葛藤を抱え続けてきたことも明かし、自身としてやるべきことはやり切ったとの思いから、今回の決断に至ったと説明しました。
不安を抱えながらも前へ進むことを選び、第5期の継続を望んでいた柴崎さんや応援してきたファンの期待に応えられなかったことへの申し訳ない気持ちも率直に語っています。
2027年3月のラストライブツアーでは感謝の気持ちを込めて最後まで全力で歌い切ることを約束し、メンバーやファンへの変わらぬ愛情を伝えるとともに、今後の新たな活動も温かく見守ってほしいと呼びかけています。
柴崎浩(G)のコメント
WANDS第5期のギタリスト・柴崎浩さんは、WANDS第5期の活動終了を発表し、ファンへの感謝と率直な心境を伝えました。
ボーカル・上原大史さんから活動終了の申し入れを受けたことは大きな衝撃だったと明かし「まだまだ続けたかった」という思いと、ファンに新たな景色を見せたかったという無念さを語っています。
一方で、ボーカリスト不在では活動を継続できないため、終了という決断に至ったと説明しました。また、第5期の再始動は、自身の強い思いや上原さんの決意、木村真也さんの協力、プロデューサーや歴代楽曲、そして多くのファンの支えがあって実現したものであり、そのすべてに深い感謝を示しました。
活動は決して平坦な道ではなく、再始動も決して当たり前ではなかったと振り返りつつ、WANDSを続けたいという気持ちは今も変わっていないと強調しています。
将来、再びその時が訪れることを願いながら前向きに活動を続ける決意を表明し、最後に第5期を受け入れ応援し続けてくれたファンへ心からの感謝を伝えるとともに、期待に応えられなかったことへの謝罪を述べ「今までありがとう」と締めくくりました。
木村真也(Key)のコメント
木村真也さんは、WANDS第5期のキーボードとして活動を支え「自分にできることがあるなら力になりたい」という思いを胸にメンバーと歩み続けてきました。
しかし、体調を崩したことをきっかけに思うように活動へ参加できなくなり、ライブやイベントでファンと直接会える機会も少なくなってしまったことを、申し訳なく感じていたと明かしています。
それでも、SNSや手紙を通じて寄せられた温かい応援の言葉が大きな支えとなり、活動を続ける励みになったと感謝を伝えました。
また、これまで支えてくれたファンやメンバー、スタッフ、関係者への深い感謝を述べるとともに、WANDS第5期として過ごした日々や、多くの思い出をこれからも大切にしていくとしています。
最後には、WANDSに新たな可能性をもたらした上原さんの今後の挑戦を陰ながら応援する気持ちを伝え、活動終了に際して感謝とエールを込めたメッセージで締めくくっています。
WANDS第5期の評価
WANDS第5期のCDセールスや話題性については、1990年代の黄金期である第1期・第2期を知る世代や、当時のミリオンセラーを連発していた時代と比較すると、「爆発的な大ヒット」と呼べるほどのインパクトには及ばなかったという印象を持たれるかもしれません。
しかし、CD市場の縮小やストリーミング配信の普及が進んだ近年の音楽業界の状況、さらにロックバンドを取り巻く環境を踏まえると、第5期は継続的な話題性を維持し、堅実な実績を残した成功例の一つとして評価できると思います。
チャート・CDセールスの実績
黄金期のような「シングル100万枚超え」の大ヒットはありませんでしたが、現在のCD市場を考えると、WANDS第5期は十分に上位へランクインする実績を残しています。
CDが売れにくい音楽業界において、新体制となった旧名義バンドがシングル・アルバムともに連続してオリコンTOP10入りを果たすことは決して簡単なことではありません。
再始動シングル『真っ赤なLip』(2020年)は、アニメ『名探偵コナン』のオープニングテーマに起用されたことも後押しとなり、オリコン週間シングルチャートで初登場7位を記録しました。
また、アルバム『BURN THE SECRET』(2020年)はオリコン週間アルバムチャートで初登場4位、『Version 5.0』(2023年)も同チャートで6位を獲得し、いずれもTOP10入りを果たしています。
これらの結果からも、WANDS再始動後も安定した人気と高い注目度を維持していたことがうかがえます。
代表曲は一通りセルフカバーし尽くしてしまった
しかし、WANDS第5期はアルバム『BURN THE SECRET』や『Version 5.0』、あるいは配信シングルとして代表曲・メガヒット曲は一通りセルフカバーし尽くしてしまいました。
ファンに愛される隠れた名曲やアルバム曲はまだあっても「ライト層や一般の音楽ファンを振り向かせるレベルの知名度を持つ過去の曲」は出し切ってしまった状態だったと言えます。
2025年3月26日に発売されたWANDSの8枚目のアルバム『TIME STEW』でも「天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]」「FLOWER [WANDS第5期ver.]」が収録されていましたが、明らかにコアファン向けの曲です。
コアファンにとっては感涙ものの選曲ですが、ライト層を引き込むパワーという意味では「メガヒットのセルフカバー」ほどの爆発力は期待しにくいのが実情です。
基本的に3枚目のアルバムはアーティストとしての真価が問われますが、オリコン11位、推定総売上10,523枚と『TIME STEW』は、期待されていた結果やインパクトを残すことはできませんでした。
そのため、今後のリリース曲は過去曲に頼るのではなく、第5期のオリジナル曲で勝負してゆかなければいけないフェーズに完全に突入していました。
ボーカルの上原大史の評価
ボーカルの上原大史さんは、歴代ボーカル(初代・上杉昇さんなど)へのリスペクトを大切にしながら、高い歌唱力と表現力で過去の楽曲を高い再現度で披露するとともに、新曲の魅力も充分に表現しました。
セールス面では大きな成功には至りませんでしたが、往年のファンだけでなく、新たな若い世代のファンの獲得にも成功し、ライブ活動を中心としたセールス以外の面では、確かな人気と需要を示していました。
上杉昇さんが「WANDSという枠組みすらもはみ出していくようなカリスマ」だったとすれば、上原大史さんは「WANDSの音楽を令和の時代に最高品質で響かせた体現者」だったと言えるかもしれません。
黄金期のWANDSとどうしても比較されてしまう
なぜ「売れていない」と感じられやすいのか?

WANDS第5期が「売れていない」と感じられやすい理由の一つは、1990年代のミリオンセラー時代との比較です。
「世界中の誰よりきっと」「時の扉」「もっと強く抱きしめたなら」「世界が終るまでは…」など、ミリオンセラーを次々と生み出していた全盛期の印象が非常に強いため、現在のCD売上枚数と比較すると数値上のギャップを感じやすくなっています。
「ストリーミング時代の1億再生の本当の価値とは?CD売上との違い」でも書いている通り、音楽業界全体のヒットの基準が変化したことが大きな要因ですが、現在はストリーミング配信が主流となっており、CDの売上枚数だけで楽曲の人気や世間への浸透度を判断することは難しくなっています。

また、YouTubeや各種ストリーミングサービス、SNSなどを通じて音楽に触れる機会が増えたことで、ヒットの見え方自体が大きく変化しており、それが「以前ほどまったく売れていない」という印象につながっています。
商業的な壁と先細り感
再始動直後に大きな注目を集めた「かつての名曲セルフカバー」という話題性が落ち着き、活動の中心がオリジナル楽曲へと移行していくにつれて、いくつかの構造的な限界が明らかになっていきました。
まず挙げられるのが、ライト層の定着の難しさです。往年のヒット曲を目的に再始動後のWANDSに触れたファンの中には、セルフカバー期をきっかけに興味を持ったものの、オリジナル楽曲中心の展開になるにつれて継続的な支持につながりにくい層も存在しました。
また、サブスクが主流となった音楽市場においては、過去に大きな成功を収めた「WANDS」というブランド力があったとしても、数字を継続的に右肩上がりへ伸ばしていくことは容易ではありませんでした。
そして何と言っても、文学性の高い歌詞も書いてきた「カリスマ的な上杉昇がいてのWANDS」という看板そのものが持つ影響力の大きさも、プレッシャーとなりました。
過去のミリオンセラーや数々の代表曲による強烈な印象が残っているため、第5期として制作されたオリジナル楽曲が高い完成度を持っていたとしても、世間から求められる評価基準は必然的に非常に高いものとなりました。
上杉昇の持つ文学的ルーツの壁と新たな価値を築くことの難しさ
上杉昇さんがソロになってからのカバーアルバムを見ると、文学性の高い歌詞の楽曲をセレクトして歌っています。
中島みゆき「世情」、松任谷由実「1920」、尾崎豊「街路樹」など、上杉さんのアーティストとしてのルーツみたいなものが見えます。
90年代のWANDSの楽曲「世界が終るまでは…」など自体、上杉さんの書く詞にはどこか影があり、哀愁や虚無感が漂っていました。
ソロでのカバー曲群は、その「影」の正体が彼の深い文学的ルーツにあることを証明していて、世間やコアなファンがWANDS第5期に無意識に求めていたのは、この「上杉昇が宿す言葉の情念とヒリつくようなリアルさ」だったのかもしれません。
上杉さんは引退したわけではなく、現役のボーカリストで根強いファンもいます。そのため、WANDS第5期と比較するなと言うのは無理な話です。
上原大史さんの歌唱力は申し分なく、発表される第5期オリジナルの新曲も非常に完成度の高い仕上がりでした。
しかし、上杉さんが持っていた「剥き出しの詩性」や「社会や自己への屈折した情熱」という軸と比較すると、どうしても「完成度の高いロック・エンターテインメント」と「一人の人間の生々しいドキュメンタリー」という性質の違いが際立ってしまった面があります。
どちらが良い悪いという話ではありませんが、WANDS第5期のオリジナル曲にCDセールスにして100万枚の国民的な大ヒットとまではいかなくても、20万から30万枚くらいのスマッシュヒットが1曲でもあれば、周りの見方は変わったのかもしれません。

このように、再始動後のWANDSは大きな話題性を持ってスタートした一方で、過去の成功を背負いながら新たな価値を築いていくという、独自の難しさに直面していたと言えます。
記事更新日:2026年07月24日 by KSTY


